2019.04.01

サービスを拒否できないのか?

前項でも紹介しましたが、「日本介護クラフトユニオン」の調査によると7割以上者介護職員がセクハラやパワハラの被害を受けた経験があるということがわかりました。また、ケアマネの5人に1人はセクハラを受けたことがあるというデータもあります。では、このような状況の中で介護サービスの提供を拒否することができないのでしょうか?

サービスを拒否できないのか?

現状の制度だと拒否できない?

上記の調査結果を受けて、日本介護クラフトユニオンは2018年8月に厚生労働相に対して「ご利用者・ご家族からのハラスメント防止に関する要請書」というものを提出しました。これは、介護職員へのハラスメントを介護サービス提供中止の「正当な理由」として法律上に位置付けることを求める要請書です。現在の制度では高齢者からのハラスメントに対応する術がなにもないという問題があります。現在の制度で介護サービスの提供を拒否できるのは以下の場合にのみ認められています。

ケアマネの利用申し込みに対しては、以下の正当な理由がなければ拒否してはいけません。

  • 1)キャパシティーを超えた
  • 2)利用者の住所が範囲外
  • 3)利用者が二股かけていることがわかった

<「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」から引用>

この通り、ハラスメントを理由にサービスを拒否することは現状認められていません。しかし、ハラスメントによって受ける精神的ダメージは重大なもので、この状況が改善されなければ介護人材の確保は難しく、介護保険制度の崩壊を招く恐れがあるとして、要請書に記載されている項目の実現を求めているのです。

記載された5つの項目

まずは、介護サービス利用者に対してルールを守るよう周知啓発をすることです。介護従事者の尊厳が低く見られている傾向にあるので、介護保険によるサービスは公的な福祉サービスであることをしっかり利用者に認知してもらい、ルールを守って利用してもらうことを促すよう要請しています。
次に、利用者やその家族からのハラスメントを介護サービス提供拒否の正当な理由とすることです。介護サービスは正当な理由なく提供を拒否することができません。しかし、ハラスメントは現状の制度だとその理由に当てはまりません。ハラスメントは人権を著しく侵害する行為のため、これを正当な理由としてハラスメント防止につなげるよう要請しています。
また、ハラスメントがある事例について、地域ケア会議を活用しながら対応を検討するなど、自治体の対応強化を求めています。ハラスメント問題に対して自治体が積極的に動き指導していくことで、ハラスメントを抑制していくよう要請しています。
そして、訪問介護での2人体制によるサービス提供が可能になるよう、利用者負担への補助をするように求めています。2人体制が可能になればハラスメントに対する解決策として有効です。現状の制度では2人のヘルパーを雇うと利用料も倍になるため、利用者負担を補助するよう要請しています。
そして最後が、家族介護者への支援強化です。利用者の家族によるハラスメントは、介護疲れによるストレスが要因となっているケースが多いので、家族介護者に対する支援を強化するように要請しています。

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