介護業界で働く人が加盟する労働組合「日本介護クラフトユニオン」が行った実態調査によると、回答者の7割以上が介護サービスの利用者やその家族からセクハラあるいはパワハラを受けていることがわかりました。多くの女性職員がセクハラ被害に悩まされていますが、具体的にどのような被害を受けているのかをみていきましょう。
まず、セクハラ被害にあった場合には、民事上で責任を追及したうえで損害賠償の請求ができることを知っておきましょう。また、内容が悪質であれば刑事責任を問うことができ、犯罪として成立します。同意を得ることなくわいせつ行為を行えば、強制わいせつ罪として成立するのです。では、介護現場において実際に起こった、強制わいせつ罪として訴えられかねないようなセクハラ行為とはどのようなものでしょうか。
訪問介護で働く女性ヘルパーの体験談をいくつか紹介します。「利用者に無理やり手を引かれ、そのまま寝室まで連れていかれた。そして体を撫でまわされたが、強引に引きはがして逃げた」「横になっている利用者に声をかけたところ、股間を触られた」「いきなり抱きつかれて押し倒されそうになった」「介助している最中に腕を甘噛みしたり、キスをしようとしてくる」など、これらは非常に悪質なセクハラです。また、小規模の入居型介護施設で働いている女性職員からは、「入浴介助の際に、陰部を丁寧に素手で洗えと命令された。タオルで拭くことを提案したが、ほかの職員はやってくれたのにおかしいだろうと怒鳴られた。そして無理やり手を引っ張って陰部を触らされた」といった体験談もありました。
調査を行った日本介護クラフトユニオンによると、認知症の存在もセクハラ被害が多い要因の一つだとしています。近年、傷害や暴行で検挙される高齢者の数は急増しており、認知症がその要因として考えられるという指摘があります。もちろん、介護サービスを利用する高齢者すべてが認知症患者というわけではないのであくまで要因の一つにしか過ぎませんが、認知症によって理性が欠如してしまい、配偶者とヘルパーを間違ってしまうといったケースも考えられます。そのため、悪意のないセクハラもあり得るという点は理解しておきましょう。この場合は本人も自覚がないので、利用者自身も苦しんでいる可能性があります。
だからといってセクハラ行為すべてに寛容であるべきというわけではありません。故意に行われる悪質なセクハラに対しては厳しく対応していく必要があります。そのため、悪意あるセクハラかどうかを見極めることが大切です。
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